角膜移植

[2014年09月02日]

院長の川上です。
8月の3日、9-10日と休みをとり、眼科の学会(日本獣医眼科カンファランス、比較眼科学会)に2つ行ってきました。
どちらの学会も、今年のテーマは角膜でした。
主には、角膜潰瘍といい簡単にいうと角膜の傷に対して、どのように治療するのかということがテーマでした。

内科治療で、新しい知見はあまりありませんでしたが、外科治療では、新しい人工角膜の移植の研究など興味深い発表が多く勉強になりました。

人医学領域では、角膜移植となるとアイバンクなどの提供角膜を用いることが多いのですが、獣医学領域ではアイバンク制度はないため、他の犬や猫の角膜を頂いての角膜移植というのは、壁がある状態です。
その中で、どういうふうに内科治療で治らない角膜を外科的に治していくかというと、
①結膜移植(自分の白目を角膜に移植)
②羊膜移植(馬や牛の羊膜を利用)
③豚の膀胱粘膜を使った人工角膜移植
④自家角膜移植(自分の黒目を利用する移植)

などの治療が挙げられます。
ただ、①③は、術後の瘢痕形成が大きく視力の低下が否めないこと、②は、採材の難しさなどに問題があり、現在、眼科診療を行っている獣医師の多くが採用しているのが④となります。

④自家角膜移植でも色々方法があるのですが、共通した目的は出来る限り透明な角膜=良好な視力を維持することです。

当院でも、症例に応じてこの手術を行い良好な成績をおさめております。 
角膜潰瘍(角膜の傷)は、進行すると視覚を喪失させる怖い病気ですので、眼がしょぼしょぼする、充血がある、眼脂がひどいとかの症状がある場合は、早めの受診をお勧めいたします。

↓当院での手術例

<ダルク法:辺縁の正常角膜を中央部に出来た潰瘍部に移植することで、視野の中心の透明性を確保する方法>
※術前

※術後

<パーシャル法:辺縁の角膜・結膜をスライス・伸展して中央部にできた潰瘍部に移植する方法>
※術前

※術後